【One day / One work no.07】

58081bd0.jpg【映画】★★★
題名:靖国 YASUKUNI
監督:李大穎 (リー・イン)
(2007/日本/中国)

何かと議論を醸し出す「靖国」問題。映画も公開に当たり擦った揉んだしたのが記憶に新しい。肝心な感想は少し複雑でした。10年もの間に記録された8月15日の靖国神社の光景は、この国の事実として観といた方がいいと思いますが、過去の歴史ではなく、現在の状況が見る側に多くの日本人があたかもそうであるかのような編集の仕方に首をかしげてしまう。

それなら、もっともっと撮る側の訴えたいことを踏まえ、日本全体で「靖国」がどう捉えられているかという比較論を入れてもらいたかった。この問題を様々な角度から立体的に考えられるものだったら、もっと有意義なものだったのにな。

『ヒロシマ・ナガサキ』(監督:アメリカ人)や『太陽』(ロシア人)の監督も絶賛のコメントをしているが、それほどの言葉は私は持てなかった。『ヒロシマ・ナガサキ』は、日米の当事者にインタビューしている客観性はあった。『太陽』は、日本人にとって天皇の存在そのものにクローズアップしている新鮮さがある。

私の視点が偏っているのかとふと疑問を覚えた。上記で挙げた3本の映画を同時上映したら、何かが見えてくるかもしれないですね。

なんともデリケートな問題です。

 

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【One day / One work】 #006

4cefcc6e.jpg【映画】★★★★
題名:音のない世界で
監督:ニコラ・フィリベール
(1992/フランス)

「パリ・ルーヴル美術館の秘密」と同監督の作品。ろう者の側の視点に限りなく近づこうと撮影し、健聴者には感知できない豊かな世界が描かれている。様々人々の日常が収められ、ろう者としての喜怒哀楽がありのままに映し出されている。手話の講師として登場する、ジャン=クロード・プーラン氏の発する身体の動きの一つひとつがキラキラと輝き、まるで無声映画を観てるかのようだった。


聞こえる人達は、手話は万国共通だと思っているが実はそうじゃない。
フランスにはフランスの手話がある。ドイツやベルギーの手話とも違う。
どの国にもその国独自の手話がある。
たとえば私が外国へ旅行してその国のろう者と出会ったとしよう。
手話が違うから最初は少し大変だけど、2日もたてば話が通じるようになる。
中国人でもアフリカ人でもアメリカ人でも関係ない。
でも健常者が中国に行ったとするよ。
辞書と首っ引きでも言葉は通じないだろう。

私たちは2日で十分だ。

ジャン=クロード・プーラン
英語ひとつでも何年も費やすのに、2日だなんて凄すぎる。
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【One day / One work】 #005

0b4d1f92.jpg【映画】★★★1/2
題名:パリ・ルーヴル美術館の秘密
監督:ニコラ・フィリベール
(1990/フランス)

あの巨大美術館の裏側が覗ける希有なドキュメンタリー映画。余計な解説やBGMがないからなおさら良い。展示の設営から、補修現場、作品の撮影現場、収蔵庫…etc 芸術に対する重要性が規模や運営体制に顕著に現れている。修復家や額縁職人の仕事姿にうっとり。美術館で働いていることの誇りが、職員の方々の体からにじみ出ていた。


職員:1200人
警備:375人
修復部 : 54人

古代・エジプト・オリエント・ギリシア・装飾品・彫刻・絵画…etc

職人:105人
(設営・電気・画家・額縁・製造・整備工・鉛管工・修復家・物理・科学者・音響学者・調理人・清掃人・写真家・医師・消防士・庭師…etc)

所蔵品 : 30万点
地下通路 : 15km
展示面積 : 3万平方メートル
窓ガラス : 2400枚

(パリ・ルーヴル美術館の秘密 エンドロールより)

 

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【One day / One work】 #004

our daily bread【映画】★★★★1/2
題名:いのちの食べかた
監督:ニコラウス・ゲイハルター
(2005/ドイツ)

去年日本で上映された話題作。観たい観たいと思って、やっと観れました。高度に管理され、大量生産される食材の生産過程を撮影しているドキュメンタリー映画。トマト、キュウリ、岩塩、牛、豚、鶏肉など現場の時間軸を入れ替えながら流れるように進んで行く。解説もBGMもない。変な演出がないからこそ伝わってくる淡々さこそが、一番伝えたいことなのだと思います。

とっても清潔で無機質な空間では、黙々と「いのち」を箱詰めしていた。

(工場やユニフォーム、農機具もお洒落だったな…)

なんとなく、日本のぎゅうぎゅう詰めの学校教育が頭に浮かんでしまった。
高度経済成長期に、いかに管理しやすい人間を生産するかっていう政策に基づいて作られたのだから、食べられないだけで、そういう意味では似ているのかもしれませんね。

『OUR DAILY BREAD』というタイトルなのに、邦題に少し違和感を覚えてしまった。監督はもっと「BREAD=糧」のようなドライな感覚で撮ってる気がします。それを加味して、「いのち」ってだからひらがなだと思うんですけどね。キリスト教的にBREADも「いのち」と言えば、そうなるからかしら。

ただ食事の前に「いただきます」という日本の習慣は、『いのち』を頂くということからきている。他国や違う風習で祈りや「ボナペティ」という事はあっても、食に対して「いのち」という概念を持っているかは疑問です。そういう事を意図しているのが明白だから、このタイトルはこれでいいのかもしれない。

う~ん、ニュアンスの訳って本当に難しいです。

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【One day / One work】 #003

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【映画】★★★★1/2
題名:太陽
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
(2005/ロシア/イタリア/フランス/スイス)
『昭和天皇』を題材に、ソクーロフ監督が描く世界は、日本人の視点から観ても違和感がない。現人神として苦悩する人間像、戦時下のSF映画のような天皇の私生活も興味深い。シュールな感覚を用いて、海洋生物の研究をしている陛下が想像する空襲シーンは必見。天皇役を演じるというリスクを背負ったイッセー尾形の役者魂に拍手です。
「あ、そう」という言葉の力、
ラストシーンで「そうきたか」と思わせてくれます。
これは絶対、テレビではやりませんね。
日本人として新しい感覚を与えてくれる希有な映画に出逢えました。
ソクーロフ監督、ありがとう。
 


彼は、あらゆる屈辱を引き受け、
苦々しい治療薬をすべて飲み込むことを選んだのだ。

 

 

アレクサンドル・ソクーロフ
  

 

 

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【One day / One work】 #002

f34fff7f.jpg【映画】★★★★
題名:12人の優しい日本人
監督:中原俊
(1991/日本)

ヘンリー・フォンダの『十ニ人の怒れる男』はあまりにも有名ですが、これはこの映画をもとに三谷幸喜が「日本にも裁判員制度があったら」と設定して作った戯曲の映画化したもの。12人の陪審員が織りなす日本人独特の、プラス三谷特有のユーモアが加わったやり取りに、笑っちゃうけど、気を抜くと膝カックンされる。むしろ本家よりもこちらの映画が、裁判に対して親近感がわくかも。

キャラの濃い陪審員も見物。

観賞後、「甘栗太郎」が無償に食べたくなります。

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【One day / One work】 #001

頭でっかちにならぬよう、ものを見る目がちっちゃくならぬよう、
リハビリを兼ねて日に一作品を味わう。
ぐっときた作品と一緒にどこまで飛べるのか、試してみたい。

ユメノ銀河【映画】★★★1/2
題名:ユメノ銀河
監督:石井聰亙
(1997/日本)

夢野久作の原作を読んだことがなくても、石井監督の作品をちゃんと観たことがなくても、この作品に好感を示す人は多いのでは。モノクロームだからこそ、雨、水蒸気、木漏れ日、ヘッドライトなどがより際立って幻想的に映る。殺人鬼かもしれない男(浅野忠信)に、どうしようもなく惹かれてゆく主人公(小嶺麗奈)。静かでありながら緊張感を切らさない映像美で独特の世界を描いている。

映画好きの方にはぜひ観てもらいたい一本です。

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退院

83911d24.jpg本日、退院する運びとなりました。

 といっても、治った訳じゃないので寝る場所が変わった感じです。傷口が安定してきたのと、リハビリを自宅でも頑張るということで、許可をもらう。

 もう、ナースコールの『エリーゼのために』の電子音でうなされることもないと思うと、やはりホッとします。

隔離されていたので気がつかなかったが、花粉症の季節だった…

 

それでも、シャバはいいものです。

 

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入院22日目

60ec7c85.jpg永遠の反抗期を謳歌しているJunちゃんが、歩けた!すごいぞ! 膝のお皿の骨折も治り、あとは本人のやる気次第だったが、なかなか車椅子を卒業しないその彼女が、トイレまで歩行器で行きました。
それで雪が降っているのかしら…

 

とにかく、めでたい!めでたい!

 

 

 

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入院21日目

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簡単な骨折よりも筋肉や神経の損傷の方が、回復に時間がかかるらしい。知らなかった…

今さらですがケガの名前は、

「左下腿筋挫傷」(ひだりかたいきんざしょう)

 

というらしい。

 

優しそうで案外スパルタな理学療法師のWさんは、マットの上で足を曲げたり伸ばしたりして、足の回復度合いを検査する。

ゅ:「それ、ロープ、ロープです。」

W:「これは?」

ゅ:「うーん、大丈夫です。」

というやりとりをした後、おもむろにタオルを出してきて、

W:「それじゃ、足の指で手前に寄せてみて。」

ゅ:「ぬははは、簡単ですよ。」

W:「そう思うでしょ、案外難しいんだよ。」

ゅ:「どれどれ、………えーと、うーん、右足でやっていいですか?」

W:「ダメです。」

自分の身体なのに思うように動かないのが、こんなにもどかしいとは。なんとも、地道にやるしかないですね。

午後、ウメちゃんに会いに行く。やはり、きれいさっぱり昨日のことを忘れていた

けれど、最後はいつもの体操を一緒にする。

これでいいのだ。

日に日に、私にはウメちゃんが仙人に思えてしょうがないのです。

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入院20日目

15bd0e90.jpgウメちゃんの誕生日を皆で祝うため、ショートケーキを買って、3時に間に合うように病院へ戻る。 寝ていた主役をお越してたら、目がパチクリして、ケーキに驚き、

「あの世に持って行く」

 と最上級のお誉めの言葉をもらう。

 

 最高齢の新しい友人に、乾杯!

 

 

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入院19日目

5589f3a3.jpg退院に向けて試験外出中
 予約も入れていなく、飛び込む。技量もよく分からないが、今はボサボサ頭をなんとかできれば、大満足であります。

 

今が夏じゃなくて本当に良かった。このリストバンドしていたらどっかの施設から逃げ出してきたかのようです。ところで、ここは男性ばかりなんですが、散髪屋だったのかな…

 

なんだかんだ、ヘロへロになりながらもやっと家に辿り着く。お見舞いに届いたプレセントに心から感激した。

 

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姉の友人、まちゃこさんが「乾し芋~」「乾し芋~」とイモイモしているイモートに素敵な乾物セットを贈ってくださった。姉ともども、お世話になっております。

 

歩けるようになっちゃいましたら、コルビジェ見に行きます。

 

 

 
74c182a5.jpgMRIの写真を送り付けていたのをすっかり忘れていた。関西に住む、古い友人Mから何やら届いていた。大手製薬会社に勤める彼女は、世界各国から集まる薬の副作用の翻訳をしている。いろいろと現状を知ってしまったなかは分からないが、数年前からアフター5にヨガの講師になれるくらいの指導を受けているらしい。

M:「ゆうか~、薬はほんま毒やで。飲まないのに限る!」

 

 

 たぶん、『王国』(著:よしもとばなな)に通じるものがあるのだろう。こういう、妙な一致が彼女と多い。時に怖いくらい。ふと立ち寄った、新潟の露天風呂で遭遇したときは、「こりゃ、運命だね。」とお互い悟ったのを思い出す。

 

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綺麗なお姉さんこと、オクヤンにもらったこちょうらん。

 

花にはやっぱり、癒しの効果があるのですね。

 

またドライブに、連れってって、連れてって!!

 

 

 病院に駆けつけてくれた家族や友人、何度も足を運んでくれる友人や心配して連絡をくれる友人に、本当に感謝します。ボサボサ頭の私には何もお返しできないのに、みんなとてつもなく優しくしてくれる。

 

自分がこれから何を一番大切にしなくちゃいけないか、単純かつ明快に教えてくれている、そんな毎日であります。

 

 

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入院18日目

138afb04.jpg前のベッドに越してきたJunちゃんとの付き合い方も、だんだんわかってきた。ご機嫌斜めでも、ジャンケンをすると上機嫌になる。人によって対応がかなり違うので、見ていて面白い。

彼女の好きなTV番組は、『渡る世間は鬼ばかり』と『セサミストリート』です。

救急車のサイレンが病院で止まると、

「来た来た」と嬉しそうに笑う。

 

心根は、優しいと思う…の…ですが…

いびきが凄いが、全然寝れないらしいです。恐るべし。

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入院17日目

e8e426e1.jpg24日に行われたオバマ米大統領の施政方針演説の詳報を読み、あのマイケル・ムーア監督による米国の医療制度を痛烈に描いたドキュメンタリー映画『SiCKO』(シッコ)を観賞。米国における医療制度改革がどのくらい深刻で扱いにくい問題なのか、そして幸いにも米国で交通事故に遭わなくて本当に良かった…と思うのでありました。 しかしながら、日本人を取り巻く保健制度って、値段の桁は違えど米国と方向性は一緒じゃないのかと感じざる負えない。

 

 

カナダ、英国、フランス、キューバの医療制度の素晴らしさに、国としての豊かさの基準を見せつけられた気分でいっぱいです。 不況だから医療制度改革は、できない?経済政策が優先?改革、改革って、結局、高速道路やバラ巻きに回る予算のどこが改革なのか、私には理解不能です。


f51e30b3.jpgDVDによると英国の新国保サービスは、第二次世界大戦直後の1948年7月5日に開始されている。

■新国保サービス概要

 皆さんに医療・歯科・看護のすべてのケアを提供。収入にかかわらず老若男女誰でも利用できます。特別事項を除いてすべて無料。審査も必要ありません。ですが、慈善事業ではなく主に税金が財源です。皆さんは費用の心配なく医療を受けられます。

 

 いろいろと言われているゆりかごから墓場までの政策だけど、やっぱり税金が高くても活用されていれば問題はない。

 
改革ってこういうことじゃないかしら? こういう話題になるといつも、筑紫哲也さんによる最後の『多事争論』が頭に浮かぶ。政治とはいたってシンプルなもので、何を基準に考えればいいのかを教えてくれ、目からウロコが落ちたのを鮮明に覚えている。今でも筑紫さんのHPで見れると思うので是非とも最後のメッセージを聞いてほしいです。 確か筑紫さんは、

政治とは、お金の配分に他ならない。未来への投資か過去への感謝に使うべきもの。それがちがう用途に湯水のごとく使われている。これこそが、この国の癌であり、この国は癌に侵されている。問題はいたってシンプルで本当に厄介だ。

たしか、こんなような内容だった気がする。

 

某国の政策では、国民を自由に操りたいのなら、「教育・健康・自信」を与えてはいけないというのは暗黙の了解らしい。 なぜなら、それらを手にした国民は手に負えないから、ということらしいです。 莫大な教育費や医療費、先進国ではありえない投票率の低さ、文句ひとつ言わない国民性、これぞ国策の賜物です。

あっぱれです。

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入院16日目

f6ea9d7c.jpgとうとう、この時がやってきてしまった。退院? う~ん、そう願いたいがハズレです。結構前に放送されていた昼ドラ『吾輩は主婦である』の話です。一気に全40話を観ないで、美味しいチョコを味わって食べるように観賞していた。宮藤官九郎の手腕に、腹筋をかなり刺激されました。 内容は、斉藤由紀が演じる主婦こと「みどり」に、あの文豪、夏目漱石が乗り移り展開していくドタバタホームコメディ。絶妙なキャスティング、息切れしない脚本、ノリで付けてるようで考えられたネーミング、などなど、まさに神業。褒めすぎ?いやいやいやいや。 病室でひっそりと観ていたいのに、込み上げてくる笑い。うう、止められない。

 

 ゅ:「うひょ、うひょ、ウハハハハ…」

 隣のヘッドのSさん:「渡辺さん、とうとう、気がふれちゃったみたいですよ。」

向かいのヘッドのKさん:「なんか、そうらしいわね…」

ゅ:「すみません、う、うふっ、ウヒャヒャヒャ…助けて…」

 

自分で自分をコントロールできなくなるので、観賞場所は考えた方が良いです。
03afa66b.jpg午後、病室が変わったウメちゃんに会いに行く。やっぱり忘れられていた(軽くショック)が、あの笑顔は見せてくれた。あれこれ粘り、最後は一緒に体操した。ウメちゃんに好物のかりんとうをあげたとき、

ウメちゃん:「なんでそんなに親切にしてくれるんかい。わしゃ、もらってばかりで何もお返しできないよ。」

ゅ:「う~ん、おばあちゃんのこと好きだからかな。」

 

ものすごい照れていた。本当にかわいいなぁ。ウメちゃんと私は、毎日が初対面であります。 お気に入りの映画、『博士の愛した数式』を思い出すのでありました。

 

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入院15日目

e5aa6d47.jpgどうしてもやっておかないといけない事務的なことがあり、片足が着けないが外出許可をもらう。シャバは、小雨が降っていて気を抜くとツルッと足を持ってかれてしまう。トラップだらけでかなりコワイ世界だ。 松葉づえで移動するのが、こんなにも疲れるとは…ヘロヘロになる。
 
 

 

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いつもより出血が多かった。だが、この程度なら初めての血腫の印象と比較にもならない。人間って、環境に応じていろいろと慣れてくるものです。 最初に血腫を取り出したときは、さすがに力み、「気持ち悪くなるから見ない方がいいよ」と看護師さんに言われつつ、自分の身体からどんなものが出てくるのか、そんな妙な好奇心でいっぱいだった。 切開した所からどす黒いドロドロしたものが噴き出すように出てきた。嫉妬、妬み、嫌悪、そういう負の感情が形になって身体から出てきたら、こういう形かもしれないと、感慨深く眺めていた。

 

さすがに途中で見るのをやめた。というか、腫れた部分を圧迫して絞り出すので痛くてもがいていたので。

ゅ:「せ、せんせい、子供産むのって、もっと痛いですかね、う、ううう」

H先生:「う~ん、多分そう思うよ。」(冷静に足を絞っている)

看護師さんA:「あたし、産んだことないからなあ」

看護師さんB:「子供産む方が、痛いに決まってるじゃない」(笑)

ゅ:「じゃあ、我慢します。ヒッ、ヒッ、フー、ヒッ、ヒッ、フー」

 

というか、全然そういう予定は無い。咄嗟に出た痛さの尺度がたまたま出産だった。精神的に自分の味わっている痛さを、少しでも軽減しようとした試みでした。 効果があったと信じたい…

 

 

 

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入院14日目

5249c923.jpgたくさん本を読んでも、たくさん言葉を書き写しても、現実は小説よりも奇なり。 ウメちゃんの後に、強烈な人が入ってきた。看護師さんを罵倒するわするわ、みんな目を丸くしている。でも根はとても良い人だと思う。腹黒い人が発する嫌な気は感じないから。ただ感情を上手くコントロール出来ないのと、絶対的に愛情の量が足りないのだ。

 

 

 

Kさんとその新しく入ってきた方と話をして、そう思った。 それでもKさんは、

「もう済んだことは、どうにもならないんだから、みんな忘れちゃいなさい。誰かを憎んだりずっとしていると、顔にでちゃうのよ。」

 

本当にそう思う。誰かを嫌だと思い続けるのは以外と根気がいる。そして、そこから発せられる力は決して良い方向へと私を導いかない。幸いにも、私はそういう面では根性なしだし健忘症もうまく作用しているみたいです。

 

 そのKさんに、 「貴方の顔には、甘ったれですって書いてあるわよ。」

と、言われた…トホホ

結婚、出産、男三人の子育て、浮気、介護、鬼嫁、遺産相続もろもろ全て合わせた75年を生き抜いている人の前では、私は甘ったれの鼻たれです。

でも高齢の方は口をそろえて同じことを言われる。

「楽しく生きる秘訣は、良いこと以外は忘れちゃうのよ」

 

私の特技かも。

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入院13日目

f5daaaf4.jpg突然、ウメちゃんが部屋を移動することになった。理由は、トイレの補助が必要だからもっと介助しやすい部屋にとのとこだった。つまり、寝たきり部屋に移ることになる。以前、あまり笑うことのなかったウメちゃんは最近よく笑っていたのに… その笑顔は、とてもチャーミングなのだ。

 

 

 

 ウメちゃんが小声で、「ここに居ちゃダメですか。」と看護師さんに言っていた。すかさず、Kさんがで、「お婆ちゃんは、最近よく笑うようになったし、お菓子の面倒は、Sさんがよく診てるんだけど、部屋を移動しないとだめかねぇ?」とあれこれみんなで訴えてみたが、ウメちゃんは「すみません。分かりました。」と言って部屋を出ていった。

 

大きく歳の取り方を2つに分けると、1つは全てを受け入れるタイプ。もうひとつは自我に凝り固まって全てにツバを吐くタイプ。 ウメちゃんからは、感謝の言葉か「あ~、忘れたぁ」しか聞いたことがない。 身寄りがなく、膨大な土地を所有しているウメちゃんは、あの人やあの人のこときっと全部知っている。そして全部、受け入れているようにみえる。 あの世から迎えが来るのを前向きに待っている。

 

 チャーミングな目をパチパチさせて、そして私のことなどすっかり忘れて、あの部屋で体操してるんだろう。

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入院12日目

123c4da6.jpgベッドが隣のSさんが、

「なんだか骨折した方の脚の毛が濃くなっている気がする。」

と言っていた…そんな妊婦のお腹のような現象が起きるのかしら?

じっと我が脚を見る。

 

 

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入院11日目

8e8afac1.jpg最近、左足から納豆の香りがする。包帯を外してシーネという名前の固定板の先っちょの臭いを嗅ぐ。うっ、異臭の発生源を発見。シーネ内部はギブスの原料と同じで布でカバーしているだけ、そのため水洗いは禁止。でも泡でササッと拭き洗いは大丈夫なのでは?早速、実験。見事成功。

なんとなく、関西の人が納豆を苦手だという気持ちが分かった。

本日、寝たきりに近い状態が、いかに身体を蝕むかを体感。少しづつしている松葉づえの練習だが、もちろん左足は地面に付くことはできない。全体重は、右足と両腕で支える。これが結構、ハードワークなのです。リハビリ室の階段に慣れてから、エレベーター横の階段を松葉づえで登り降りをしていた時のことだった。想像以上に階段に恐怖を覚えながらも、1回目は危なげに成功。ふぅ。

2回目、登りきる手前で膝が抜けた。打ちこまれた、ボクサーのようだった…

ロッキーのテーマが遠くから聞こえてはこなかったが、自分の筋力の急速な低下にたまげた。

このままじゃ、シャバに出られない…と悟るのでした。

 

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